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第73話 夫婦の席

作者: Sunny
last update 公開日: 2026-06-14 18:01:25

会食当日。

久しぶりに、優と並んで家を出た。

玄関の鏡の前で、私は小さく息を整える。

隣に立つ優は、ネイビーのスーツを着ていた。

肩のラインが綺麗に出るジャケットに、落ち着いたグレーのネクタイ。

派手さはないのに、控えめに整ったその姿は、昔から優らしかった。

少し疲れているはずなのに、顔立ちは相変わらず端正だった。

切れ長の目。

通った鼻筋。

感情をあまり見せない口元。

優は黙っているだけで人目を引く人だった。

華やかに笑うタイプではない。人懐っこいわけでもない。

それなのに、場にいるだけで空気が少し締まる。

その横顔を見て、ふいに思い出す。

結婚したばかりの頃。

会食や式典で優の隣に立つことが、少しだけ誇らしかった。

この人の隣にいるのが私なのだと。

そう思えた時期が、確かにあった。

「行く?」

優がこちらを見る。

いつもの短い声。

でも、今日はほんの少しだけ柔らかかった。

「うん」

靴を履こうとした時、優が私の薄手のジャケットを見た。

「……寒くない?」

息が止まる。

そんなことを聞かれたのは、いつ以来だろう。

「大丈夫」

そう返すと、優は少し迷ったあと、自分のコートを手に取った
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